航空局から小型機運航者の皆様へ(第58号:令和4年6月)
(一社)日本航空普及協会 会員 各位
いつもお世話になっております。
航空局航空従事者試験官より夏季運航における注意点について案内がありましたのでお知らせします。
ご確認いただきますよう宜しくお願い致します。
一般社団法人 日本航空普及協会
事務局
東京都港区赤坂9-6-28 #203
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[2022年6月23日]
★夏季運航における注意点(天候急変) ~航空従事者試験官より~
まもなく暑い夏がやってきますね。
夏といえば、頭上に高く昇る燦々と輝く太陽、青い空に映える入道雲、どこまでも続く水平線などの開放感あふれる夏のイメージが
ある一方で、初夏において東北以北の地域付近に発生する海霧、全国的に影響を及ぼす梅雨前線、梅雨明け後にやってくる台風、寒気の
流入や日射の影響による雷やゲリラ豪雨・・・などなど夏の天候はパイロットの運航に影響を与えることが多い印象を持っている方も
いらっしゃるのではないかと思います。
単に天候解析といっても、飛行する空域によって天候特性も変わってくることを踏まえ天候予察を行う必要がありますが、最近では
天気図も白黒のものばかりではなく、インターネットにて数値予報を含めた様々な天気図をカラーで確認できる環境にもなってきており
活用できる気象資料の幅は広がっているように感じます。そのため、天候急変に陥るような事態は従前に比べて少なくなってきたかも
しれませんが、それは天候解析を確実に行った場合に言えることであり、飛行前の天候確認は航空法でも定められているとおり、
しっかりと行った上でフライトに臨む必要があるのは言うまでもありません。
・・・と偉そうなことを述べておきながら恐縮ですが、かつて私も飛行場付近(飛行場から40nm程度離れた空域)を飛行するくらいなら
大丈夫だろうと高をくくってフライトに臨み、天候解析を甘く見積もったままフライトに臨んだため、危うく降りる飛行場がなくなりかけた
苦い経験があり、その記憶は20年近く経った今でも鮮明に覚えております。原因は海霧が飛行場に侵入したからなのですが、風向の変化
などにより一度海霧が飛行場方面へ侵入し始めると付近の代替飛行場も同じく海霧の影響を受けることが多いため周辺の飛行場も含めて
IFRでも進入できなくなるほどの天候急変に陥ることが少なくありません。燃料に余裕がある大型機と違い小型機であれば飛行できる
エリアが限られていることもあり、そういう不安がある日は飛行しないで良いならそれが一番かもしれませんが、海霧侵入の可能性が
ある中でも飛行する必要がある際にはカンパニーと連絡を密にする、関連する飛行場の天気をいつもより頻繁にモニターする、燃料を
多めに搭載するなどの対策を持って臨む必要があるかと考えます。
梅雨時期においては前線の動きを天気図から予測することは難しい時もあり、私はかつて飛行場実況(METAR)で「視程8000m、-RA」の
飛行場に進入した経験がありますが、これが本当にVMCなのかと疑念を抱きたくなるほど周辺の天候が悪く、「二度とこの実況ではVFRで
飛行場に進入しないぞ。」と心に堅く誓わされた経験をしたこともあります。
また、悪天域の飛行においては恥ずかしながら被雷した経験もあり、原因は無理して雷雲域を飛行して飛行場に進入したからなのですが、
状況にもよりますが夏の昼過ぎから夕方にかけて降る夕立のように急激に発達して飛行場にかかってきたものは雷雲が過ぎ去るまで
離れた場所で待機していれば30分もすると天候が回復することも多く、そのときも無理して進入せずに雷雲が過ぎ去るまで待機していれば
何も問題なく着陸できた状況でした。
私の苦い経験は掘り下げていけばまだまだ出てくるのですが一旦ここまでとさせて頂き(汗)、最後にお伝えしたいのは、天候が悪くなると
飛行場への進入経路も限られ同空域に同じ飛行場への進入機があった場合には必然的にトラフィック同士が近接する危険性があり、天候への
対処に意識が削がれてしまうと他機への見張りが疎かになってしまうかもしれないことです。
大分前になりますが以前私が読んだ雑誌の中に「ニアミスの実態」に関して記述されたものがありましたので参考に紹介させて頂くと、
・ニアミスの90%は小型機が関与
・85%は飛行高度3,000ft以下で発生
・70%は飛行場の近辺で発生
・50%はSee & Avoid を怠ったため発生
・50%は管制施設のある飛行場で発生
というデータもあるようです。
新型コロナウィルスも収束の兆しが見え始め、これから迎える夏本番に向けて多くの方が様々な目的で夏の空を飛行する計画を立てられて
いるかと思います。
夏季運航に向けて本投稿が皆様の安全運航の一助になって頂ければ幸いです。
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国土交通省 航空局 安全部安全政策課
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小型航空機安全対策係(内線50135)
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